頭痛と痴呆[認知症]
「頭痛(ずつう)」に悩む人は、その程度もさまざまですが、非常に多いのではないかと思います。
慢性頭痛(まんせいずつう)の90パーセント近くを占めるのが、「血管性頭痛(けっかんせいずつう)」と「緊張性頭痛(きんちょうせいずつう)」です。緊張性頭痛は、「筋収縮性頭痛(きんしゅうしゅくせいずつう)」とも呼ばれます。
●血管性頭痛
血管性頭痛というのは、血管が異常に拡張するために生じる痛みです。
この代表的なものが「片頭痛型血管性頭痛(へんずつうがたけっかんせいへんずつう)」です。片頭痛型以外の頭痛には、かぜや他の感染症のさいの頭痛、二日酔い、一酸化炭素中毒によるものなども含まれます。
●緊張性頭痛
緊張性頭痛は、筋肉の収縮によってあらわれる頭の痛みをいいます。
頭蓋骨(ずがいこつ)についている筋肉が持続的に収縮して起こるものです。
片頭痛、緊張性頭痛、いずれも反復して起ります。
また頭痛にはその他に、脳腫瘍(のうしゅよう)や慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)など、頭蓋内圧が高くなって起こるものもあるので注意が必要です。
さらに脳卒中(のうそちゅう)に伴って生じる頭痛もあります。
頭痛のなかには、心配ないものもあることは確かですが、ご本人にとってたいへんな苦痛であることは確かです。また、慢性硬膜下血腫や脳腫瘍から二次的に痴呆[認知症]症状が出ることもありますから、頭痛の症状がひどい時には一度、きちんとした検査を受けてみることが大切です。
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痴呆[認知症]の現在
厚生省の調査によると、痴呆[認知症]を抱える高齢者の数は、日本国内で百万人程度に上ると言われます。そのうち自宅で生活している患者さんは、75万人です。その他の方々、25万人は老人病院、特別養護老人ホーム、精神病院などの施設で生活していらっしゃいます。
この調査結果からみてわかるように、痴呆[認知症]の患者さんの多くは、ご家庭でご家族の看護や、在宅看護サービスを受けながら生活しているのです。
しかし、現在急速に加速しつつある高齢化の波にともない、2015年には、痴呆[認知症]老人は、262万人に達すると予測され、在宅で生活する人は、180万人に上ると考えられています。
現在、痴呆[認知症]の原因は明確ではありません。またこれといった根本的な治療法もないのが現実です。一部、内科的治療や脳外科手術で治るものもありますが、アルツハイマー型痴呆[認知症]の場合、その原因も解明されておらず、治癒は困難とされています。
日本の痴呆[認知症]患者さんは、特に老人痴呆[認知症]の場合、その約4分の3は、脳血管性痴呆[認知症]とアルツハイマー型痴呆[認知症]で、残りが一部の変性性疾患、感染症、内分泌代謝疾患、頭部外傷などによるものとされます。
このように痴呆[認知症]をめぐる現状は、その原因の究明から治療法の確立まで、手探りの状態です。ご本人の苦痛もさることながら、在宅治療におけるご家族の負担を考えるとき、一刻も早い、治療開発が望まれます。
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脳出血と脳梗塞
痴呆[認知症](ちほう[にんちしょう])には幾つかのタイプがあり、良く知られているのは、アルツハイマー型痴呆[認知症]です。これは老年痴呆[認知症]と呼ばれているように、脳の老化が原因ではないかと言われています(明確な原因は明らかになっていません)。
一方、脳血管性痴呆[認知症](のうけっかんせい(ちほう[にんちしょう])の場合(多発梗塞性痴呆[認知症](たはつこうそくせい(ちほう[にんちしょう]))の場合は、脳出血(のうしゅっけつ)や脳梗塞(のうこうそく)によって特定部位が障害されたり、小さな梗塞巣(こうそくそう)がたくさんできたためにおこるものです。
●脳出血(のうしゅっけつ)
脳の小さな動脈が破れて脳内に出血がおこり、手足の麻痺(まひ)、意識障害などの症状が出る病気を「脳出血」といいます。
●脳梗塞(のうこうそく)
脳への血流が少なくなり、そこで利用される酸素と栄養素が不足すると、脳の細胞が死んでしてしまいます。脳梗塞というのは、このような状態が脳の一部で起こることを言います。
日本では、最近の傾向として脳出血が減少しているのに対して脳梗塞は横ばい、あるいは多少ながらも増加しています。そのため後遺症を残している人が、逆に増えていることが問題となっています。
脳梗塞の予防は、高血圧の予防と重なります。塩分制限や薬による血圧コントロールが重要な対策となります。そのため食事療法などで血圧を自己コントロールすることが大切です。
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脳外傷
「脳外傷(のうがいしょう)」というのは、事故などで頭部に外から大きな力が加わることによって、脳の組織が障害された状態をいいます。原因は、交通事故が最も多く、次いで労働災害、不慮の事故、スポーツ時の障害などさまざまです。実際、青壮年層の死亡の主な原因のひとつとなっています。
加わった力が軽ければ、障害も軽くてすみますが、大きくなると、死にいたるような重傷となります。
症状は、脳の障害の程度によって変わります。軽いものでは、外傷を受けた直後に一過性の意識消失や健忘(けんぼう)、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)といったものです。健忘というのは、傷を受ける前後のことを思い出すことができない症状を言います。
軽い程度のものは、一般に「脳震とう(のうしんとう)」と呼ばれ、脳自体に出血などの大きな傷はなく、安静にしていればおさまります。
しかし障害が重い場合には、意識が戻らず、脳の組織が壊れてしまったり、出血をともなったりすることがあります。出血した場合には、その部位や大きさによってさまざまな神経症状が現れます。
高齢者の場合、「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」といって、軽い頭部の外傷後に2~3か月してから脳の表面に血液がかたまり、麻痺や痴呆[認知症](ちほう[にんちしょう])などの症状が現れることがあります。高齢者の場合、外傷が小さくて、いつそれを負ったのか覚えていないこともあります。そのため周りの人が注意をしてあげることが大切です。
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脳の委縮
アルツハイマー型痴呆[認知症](あるつはいまーがた(ちほう[にんちしょう]))では、大脳の委縮(いしゅく)や神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)の変化がみられます。
脳の縮小は、正常老人の約10パーセント減少で、特に前頭葉(ぜんとうよう)、側頭(そくとう)、頭頂葉(とうちょうよう)の減少が著しいと言われます。また、脳室(のうしつ)の拡大、神経細胞の脱落と委縮、アルツハイマー神経原線維(あるつはいまーがたしんけいげんせんい)の変化、老人斑(ろうじんはん)などが見られます。
●老人斑とは?
老人斑というのは、アミロイドと呼ばれる色素たんぱくが脳に沈着したものをそう呼びます。
特に、アルツハイマー型痴呆[認知症]の大脳皮質に多く見られ、第21番目の染色体にある遺伝子の異常によって生じることが推測されています。
アルツハイマー型痴呆[認知症]では、老人斑や神経原線維変化などの生化学的研究から、生物学的に原因を突き止めようという動きがあります。いろいろな研究がおこなわれつつありますが、本格的な原因の究明にはいたっていません。
アルツハイマー型痴呆[認知症]には、決めてとなる治療法はありません。症状が進むと、歩行困難や失禁(しっきん)などの神経系の変化くる異常がみられます。そしてさらに症状が進むと、寝たきりになってしまいます。
末期は完全な痴呆状態となり、てんかんの発作などを起こす危険さえあるのです。ふつう発病から5~10年で死にいたります。
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仮性痴呆[認知症]
痴呆[認知症]の明確な原因は明らかになっていません。ただし、からだの病気や環境の変化など、生活が変わったことをきっかけとして起ることが多いと言われています。定年や入院のためにそれまでの生活を送ることができなくなったとき、痴呆[認知症]の発症が促されると考えられます。
このような事態を避けるために、健康に注意すること、仕事以外の趣味をもつことが大切といわれます。
また、加齢とともに、病気になる可能性は高まります。食事や運動に留意し、バランスのとれた生活を心がけましょう。
それでも病気になってしまったときはどうしたらいいのでしょう?
寝たきりになってしまうと痴呆[認知症]がますます進行すると考えられます。適度な運動心がけ、効果的なリハビリを行う必要があります。
廃用症候群(はいようしょうこうぐん)
病気になったときには安静が必要です。しかし安静第一主義には、マイナス面もあるのです。安静によって引き起こされる合併症を「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」と言います。病気の治療を行いながらも、こうした廃用症候群を防止するための対策をとることが大切です。
廃用症候群には、筋委縮(きんいしゅく)、廃用性骨委縮(はいようせいこついしゅく)[骨粗鬆症(こつそしょうしょう)]、関節拘縮(かんせつこうしゅく)、床ずれ、起立性低血圧、精神的合併症があります。
特に精神的合併症の場合、言語能力の低下や食欲不振など、痴呆[認知症]と誤認される(仮性痴呆[認知症](かせい(ちほう[にんちしょう]))症状が出ます。
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物質中毒せん妄
痴呆[認知症]の定義で必ず現れるのが、「その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない」という一節です。
せん妄には、1.「[一般身体疾患]によるせん妄」、2.物質中毒せん妄、3.物質離脱せん妄、4.複数の病因によるせん妄、5.特定不能のせん妄といった、さまざまなタイプがあります。
そのうち、「物質中毒せん妄」は、アメリカ精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引き』(DSM-4)では、次のように定義されています。
物質中毒せん妄
1.注意を集中し、維持し、他に転じる能力の低下を伴う意識の障害(すなわち環境認識における清明度の低下)
2.認知の変化(記憶欠損、失見当識、言語の障害など)、またはすでに先行し、確定され、または進行中の痴呆[認知症]ではうまく説明されない知覚障害の発現。
3.その障害は短期間のうちに出現し(通常数時間から数日)、1日のうちに変動する傾向がある。
4.病歴、身体診察、臨床検査所見から、(1)または(2)のどちらかの証拠がある。
(1)基準1および2の症状が物質中毒中に出現した。
(2)投薬の使用がその障害に病因的に関連している。
そして「特定物質」として次のものが挙げられています:
アルコール、アンフェタミン(またはアンフェタミン様物質)、大麻、コカイン、幻覚剤、吸引剤、アヘン類、フェンシクリジン(またはフェンシクリジン物質)、鎮静剤、催眠剤、または抗不安薬、他の(または不明の)物資(例:シメチジン、ジギタリス、ベンズトロピン)
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せん妄
精神病疾患の診断のバイブルとされる、アメリカ精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引き』DSM-4では、痴呆[認知症](ちほう[にんちしょう])のさまざまなタイプについて定義を行っていますが、そのなかにいずれも「その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない」という一節があります。
では、その「せん妄」というのはいったいどのようなものなのでしょうか?
同じく、アメリカ精神医学会『精神疾患の分類と診断の手引き』(DSM-4)では、「せん妄」を幾つかのタイプに分け、次のように定義しています[参照:『DSM-4精神疾患の分類と診断の手引き新訂版』医学書院]。
せん妄のタイプには次のようなタイプがあります。
1.「[一般身体疾患]によるせん妄」
2.物質中毒せん妄
3.物質離脱せん妄
4.複数の病因によるせん妄
5.特定不能のせん妄
●「[一般身体疾患]によるせん妄」の定義
1.注意を集中し、維持し、他に転じる能力の低下を伴う意識の障害(すなわち環境認識における清明度の低下)
2.認知の変化(記憶欠損、失見当識、言語の障害など)、またはすでに先行し、確定され、または進行中の痴呆[認知症]ではうまく説明されない知覚障害の発現。
3.その障害は短期間のうちに出現し(通常数時間から数日)、1日のうちに変動する傾向がある。
4.病歴、身体診察、臨床検査所見から、その障害が一般身体疾患の直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある。
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ピック病
ものごとを覚える意欲がなくなるため、一見記憶力が悪くなったように感じられ、痴呆[認知症](ちほう[にんちしょう])と類似した症状を示す病気に「ピック病」があります。
大きな人格の変化を特徴とし、それまで穏やかだった人が、家庭や勤め先で無分別な行動を起こしたり、平気で他人に迷惑をかけるようになり、周囲の人を混乱させ驚かせます。
注意力が散漫になり、他人の質問や話に真面目に耳を傾けなくなることから、記憶力(きおくりょく)、見当識(けんとうしき)の障害を疑われますが、実際には、それらの能力はほとんど侵されていません。
見当識障害とは、自分が置かれている場所・時間・環境を把握する認識能力を「見当識」といい、その能力が障害されることを「見当識障害」といいます。脳の損傷などが起こると、こうした認知能力が起こることがあります。
アルツハイマー型痴呆[認知症]では、大脳の委縮(いしゅく)や神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)の変化が見られます。
一方、ピック病には、側頭葉(そくとうよう)の委縮、脳室(のうしつ)の拡大といった、脳に特有の異常がみられます。そのため、独立した遺伝が関係する病気と考えられています。
こうした病の原因をこうした生物学的研究から突き止めようとする動きが最近活発になりつつあります。残念ながら、まだ本格的な解明にはいたっていませんが、罹患者数が増加し、事態が深刻化する現在にあって、期待が寄せられています。
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神経成長因子
痴呆[認知症]に対する根本的な治療法はまだ確立されていません。ただし、ここ数年、脳の循環や代謝をよくする薬が多数開発されつつあり、多くの患者さんに利用されるようになっています。そしてそれなりの成果も認められつつあります。しかし、これらの薬の効果というのは、痴呆[認知症]に伴うさまざまな症状、たとえば、せん妄や暴力などの周辺症状に対するものであり、知能低下という痴呆[認知症]の中核症状を改善させるものではありません。
では、知能低下を治療する方法はあるのでしょうか?
残念ながら、「ない」というのが現状です。痴呆[認知症]に伴う知能の低下を改善するためには、脳の神経細胞の再生を促進し、失われてしまった脳の機能をよみがえらせる必要があります。あるいは、神経と神経のあいだの情報伝達を活性化し、脳のはたらきをよみがえらせる薬が必要なのです。
神経細胞が分裂や増殖を行うために必要な因子を神経成長因子と言います。
最近の研究から、これらの因子の痴呆[認知症]に対する治療の有効性が注目されています。脳の細胞は本来増殖しないといわれています。つまり、一度死んでしまった細胞は、もう二度と再生できないのです。
それでも、ダメージは受けてはいるもののまだ死に至ってはいない「瀕死の細胞」をなんとか回復させるのに、神経成長因子が有効なのではないかと考えられるのです神経成長因子。現在はまだ、動物実験の段階ですが、ラットの研究から、記憶力の低下したラットにおいて、記憶力・学習能力が改善したという報告もあり、期待されています。

